Bookworm enrich the soil of the HEART.

Hello BOOK LOVERS !

ようこそ、サンセット・ブック・クラブへ。

本はお好きですか?
はい!わたし達は本が大好きです。
本を読むことも、音楽を聴くことも。映画を観ることも、大好きです。

ふむふむ、うんうん、なるほど、うわぁ。
そんな気持ちをくれた本や音楽をご紹介します。
サンセット・クルーに加えて、わたし達の読書仲間からもお届けします。

本の虫はこころの土を豊かにします。
ハートの肥料に一匹、本の虫をどうぞ!


Dec 29.2020

#7 すべて忘れてしまうから / 燃え殻

Recommended by MAKI


人の記憶は曖昧なもの けれど、一欠片のできごとが心のどこかにあって、何年も忘れていたのに 突然思い出す不思議
11月にしてはまだ薄手のアウターだけで出かけられる、ヒートテックインナーの登場も無い暖か い日、わたしは大阪の街にいた。 滞在2日目の夕方、弟と姪に車でホテルまで送ってもらい、夫と晩ごはんどこに食べに行こうか話 していて、急にわたしの友達も誘ってみることにした。
その友達とはかれこれ20年以上前、大国町にあるマンション(いやハイツ、、と呼ぶのが適切 か。5階建て、階段なしの建物)で今でいうところのルームシェアをしていた。 メンバー構成は卸売市場の貝屋さんで働く男性(起床時間AM3時くらいだったか?彼の部屋から けたたましく鳴るアラームの音にも次第に慣れてしまっていた。よく作ってくれたのは中華鍋でつ くるスパイスカレー。みんなのアニキ)、デザインの仕事をしている男性(起床時間確か9時くら い。カルチャー、音楽にめちゃ詳しい。関東出身の彼からは当時とても東京を感じて憧れた。一 緒にフリーソウルの流れるカフェでカプチーノなんて飲んじゃってたような気がする。)、下着の 販売をしている女性(今回ごはんに誘おうとしている彼女。起床時間確か日によって違った。ね こ好き。のちにメロンというねこも一緒に暮らすこととなる。ピーマンは冷蔵庫にしまわず袋か ら出して窓際に並べる、という保管方法をとっていた。)、飲食店で働いたり古着屋の手伝いし たりしているわたし(起床時間バラバラ。掃除機をかけるのが好きでみんなの部屋に勝手に侵入 し、やっていた。よく行く場所は古書店、ドラムンベースのイベント)という4人。
わたしはその家には住む前、時々遊びに行っていて、ひとり抜けるから代わりに住まない?と誘 われ軽い気持ちで暮らし始めてみた。 その後1年でメンバーも変動し、わたしも実家に戻ることになった。 短い間ではあったけれど、年上の人たちと暮らす日々は末っ子になったみたいでとても心地良 かった。
時代は今に戻ってその彼女に「いま大阪にいるんだけど、ご飯行かない?」LINEを送ってみる。 夕寝をしていたらしく、しばらくしてから『いく!』との返事。 そして共同生活していた卸売市場の彼とその奥さんも誘ったから。車でお好み焼き食べに行くか ら1時間後に大国町の駅ね、とのこと。
話がめちゃ速い。
彼女とはたまーーに会ってたんだけど彼とその奥さんに会うのは10年以上ぶり。 待ち合わせ場所で久しぶりの再会。 そこで彼と奥さんがわたしの夫に言った言葉、
「はじめまして」
。。。 えーっ!!

 ふたりは過去に会った事のある夫のことを完全に忘れていた。 うちの家に来てくれたことを話しても、一向に思い出せない様子。 ひとりじゃなくふたりに忘れられていることが、可笑しかった。 ふたりははじめまして、の気持ちのまま、みんなで牛すじやじゃがいもが入ったお好み焼きを食 べて、帰り道に飼いねこピー太郎くんに会わせたもらった日。 「今日のことも、数年後に会ったら忘れてたりしてー」とか言いながら。
『すべて忘れてしまうから』
この小説には、もう戻れない瞬間がふとした時に訪れる。 そんなことあるの?っていう記憶。癖の強いキャラクター。 気持ちが塞ぐような記憶ばかりなのに読んでいて笑ってしまうのは力が抜けた文章と あーこれ半分夢なんじゃないか、だといいなーみたいなエピソードのせいかもしれない。 夜、すーん。とした気分の時に読みたい本。
ことし自分は何やってたんだろう?と冬の空気を肌で感じながら記憶を辿っていたら、今回の文章ができました。

photo by MAKI


August 11 2020

#6 仕事本 わたしたちの緊急事態日記

Recommended by MAKI


 8月1日。昨日の疲れで遅い時間に目を覚ますと空が夏の空気に変わってた。
真っ白な雲、陽射しよ、やあ久しぶり。 
やっと傘を持ち歩かなくても大丈夫になるのかな。

いくら暑くたって8月31日には一旦『夏の終わり感』がある。 
そう思うと今日から1か月ぴったり。今年の夏は何をしようか。 
いつもの夏だったら実家のある大阪に帰ったり遠くで暮らすともだちを尋ねたり、 そうそうLiveね。Liveに行けない夏かあー、苦しいなあ。

ーここまで書いて、置いといたら今日はもう8月10日。 
この10日間の記憶といえば仕事していたこと。
仕事に行くとほんとーに1日が早い。 
わたしが働いているお店はこの時期でも来てくれる人がいるおかげで忙しいのと、だいぶ慣れて 環境が整ってきたものの、まだ模索中のこと、できるようになりたいことがたくさんで、あれこ れ考えながらやっていると時間がビュンビュン過ぎていく。

緊急事態宣言が出ていた4、5月。時間を持て余していて、時間があるからできたことがたくさん あったけれどあの時は早く働きたいーって思っていたな。 今思えば仕事をしたい、というより人やものに関わりたい、と思っていた日々。

「仕事本 わたしたちの緊急事態日記」 この本には・売る(スーパー店員)・運ぶ(ゴミ清掃員)・闘う(ライブハウス店員) ・創る(落語家)・守る(専業主婦)・繋ぐ(台湾の蕎麦屋経営者)・導く(占星術家)など 様々な職種の人たちの緊急事態宣言以降の4月の日々綴られている。 
日記でもあり、働き方図鑑でもある。 一つの仕事が誰かの生活を支えていること、影響を与えていること。 
過酷な状況で働くひとの強さ、先が見えない中、揺れる感情。 
人との関わりかた、自分の感情との向き合い方が読んでいて響いた。 
こういう時こそ、くだらないことやどうでもいいことに救われるんだなー。 
この本に出てきた人たちは3ヶ月経って、今どういう夏を過ごしているかなあ、と気になってい る。

ライフ・ゴーズ・オン。仕事も生活も続くよ、どこまでも。

 

photos by MAKI


June 28 2020

#5 いいことから始めよう スヌーピーと仲間たちからの生きるヒント/エイブラハム・J・ツワルスキー

Recommended by MAKI


ひとと殆ど会わない生活を経て、急にたくさんのひとと話したりかかわる生活、 以前はやっていたことにぴゅーんと戻った6月。あと10日もない。
ほぼ「はじめまして」のひとたちのなかにいる緊張。
こういう感覚忘れていたなあ。 なんとなく、じぶんはこの場所でこう有りたい、とかあたまだけで考えてしまってすこし 疲れていたけど、よく考えたらみんなわたしのこと未だ知らないし、わたしもみんなのこと これから知って行くんだった、って考えたら色んな音が鳴ってる場所でじぶんの楽器を 鳴らしたり、歌ったり、ときには朗読したりしていけばいいんだって思いながら星のついた缶ビールを 呑み呑み、歩く夜道。濡れて光る地面。
じぶんの楽器鳴らしの達人で個性の塊で思いつくのは「ピーナッツ」のキャラクター。
ジグザグTシャツを着た野球チームの監督、全く勝ち目がなくても決して諦めない、チャーリー・ブラウン。 ピーナッツで一番騒々しく周りに当たり散らしているルーシーは精神分析スタンドを経営している。 鍵っ子でついテレビに夢中になり、学校の成績はからきし駄目。だけどスポーツは万能なタフガール、ペパーミン ト・パティ。本名はパトリシア・ライクハートだって。どちらも良すぎ。 元気いっぱい自信に溢れたビーグル犬、スヌーピー。犬小屋の三角屋根の上が落ち着く場所。
こんな面々がそれぞれ大真面目に悩み人生に向き合っているピーナッツの漫画を精神科医が解読した本、

 「いいことから始めよう スヌーピーと仲間たちからの生きるヒント」 分析をふむふむ、と読んだのち隣のペイジの漫画を読むとズコー!とコケます。 キャラと発言が強すぎて、分析がどっか行ってまう感じ。 あたまやからだのどこかか少しウーっと詰まってきたときにパラっとめくると楽になれる本、です!





photos by MAKI


June 1 2020

#4 台北 / シャムキャッツ

Recommended by MAKI

ただいま世の中ゴールデン・ウィークと云われるウィーク。
ことしはいつもとは違う景色になってしまったけれど。

去年はひとり、一昨年は2人で。
ゴールデン・ウィークが終わった次の週あたり、わたしは台北の街にいた。
リュック一つを背負って成田から飛行機に乗り、あっけないほどの早さで桃園空港に降り立った。
一昨年は友人と旅していた。その時は友人のアテンド力が素晴らしすぎて、
わたしはナーンにもしてない、ただじぶんのしたい事、食べたいものを伝え、ついていく。
目的地への道案内、食事処の予約、マッサージ処の予約、持ち帰りのパイナップルケーキの手配に至るまで全てお任せ状態であり、
食に関してはなかなか予約の取れないレストラン(「raw」席に着くと食材のなまえが書かれたカードが置かれる。その食材がどのように調理され、どんな味、姿で出てくるのかはサーブされるまで判らない。料理とアルコールのペアリングも、ふーむ。。視覚と味覚がめちゃ忙しかった夜だった。)から、ゲットー(南機場夜市内にある水餃子やさん。物凄いリズム感で包まれ、グラグラ湯立つ鍋に投げ込まれていく水餃子。
食べ終わった後のメラミン素材のお皿が放り込まれた地べたに置かれた桶。まみどりのテーブル、あきらかに頼みすぎの酸辣湯を見て見合わせる顔、笑うしかない)まで、
とにかく移動している時と眠っている時以外は食べ続けている、と云っても言い過ぎではない旅だった。

台北での記憶というとその殆どが食べもので埋め尽くされてしまうが、
同時に想い返すのが街の空気と匂い。
一度目の時をおもい、かえす。
とにかくめちゃくちゃ暑かったが、水を飲み飲み、台湾麦酒を呑み呑み、出来る限り歩いて移動し、その空気を吸い込んだ。
無数のバイクから吐き出される排気ガス、
野良犬がいまにも出てきそうな夜市に向かう道、
なんでか南国スタイルの木が連なる通り。
夜、ベッドの上。バスローブいっちょで(パジャマを荷物に入れるのを忘れた)缶チューハイを飲みながら話したこと。

二度目の旅、雨すごい。。お茶屋のおじさんがいうところのバイウー(梅雨)である。
台北駅からホステルに戻るには地下街をあるく。iPhoneの非純正ケーブルばかりを売ってる店、サーモタンブラーばかりを売ってる店。うん、専門店。
効きすぎの電車のクーラー。
阿宗麺線を立ち食いした帰り道、お腹いっぱいのところへ攻撃的過ぎな臭豆腐の匂い。
あれはまだデビュー出来そうにない。ひとり旅は帰り道がさびしい。気持ちがすーん、となる。

ゆるやかに流れる景色の中の些細なことがすごく印象に残る街だなあ、と思う。

シャムキャッツの音楽、ステージも、台湾にいるときとおんなじ空気感を感じる。
緩やかな日常、ぬるめの温泉に浸かっているような気持ち良さ、
酔拳ばりのくねくねダンスが似合う音。
過ぎ去った青春感(此れは30代男子にしか描けないものだと思う)、羨ましい。

いまこれを書くためにアルバム「Friends Again」を久しぶりに聴き返していたら、その音の心地良さにリピート、リピート。止まらなくなった。


photos by MAKI


May 12. 2020

#3 賃貸宇宙 / 都築響一

recommended by MAKI

東京で暮らしはじめて15年が経った。
一度引越しはしたけれど、キョリにしたら1Kmちょっとの移動なので、
ずっとおなじエリアに住んでいる。
こんなに長く暮らしているのに、東京が自分の居場所って感じがしない。
街の様子の移り変わりが激しいせい?

知らない場所がまだたくさんで初めての場所を訪れるときは未だに旅をしている気分になる。
電車に乗らなくても、家から歩いて行ける場所でもそう感じられる。

いまこの文章を書いている場所は最近家の近所を歩き回っていた時に見つけた、緑道にある机の上。
ときどき目の前をランニングしてるひとや散歩中の犬たちが横切っていく。スケボー練習中少年も。
スニーカーがアスファルトを蹴る音や鳥の声がして、落ち着く場所。ふいに虫が近寄ってくることだけは、難点。。。

わたしが東京で暮らしはじめた2005年に出版された「賃貸宇宙」
東京で暮らす人々のリアルな賃貸部屋の写真に都築さんのコメントが英文、和文で載せられている。
そこの住人たちの部屋からは、ハイクラスな暮らしをしたいという野心はなく、ただ自分が快適な暮らしをしたいという考えが表れている。

部屋を見ればその人がわかる?読んでる本でその人がわかる?なんだっけ?
とにかくそんなかんじで個性溢れる部屋をパラパラ見ていて飽きない。
15年も前の生活(ゲンミツに云うと1993〜2001年に撮ったものみたいなので20年は前になるね)なのに違和感を感じないのはインターネットやスマートフォンが普及する前と、いまのスピードのなかで生きる人々の営み自体は変わらないからかなぁと思った。
感じる喜びも、哀しみも。

いまの時期、じぶんの快適に感じる場所やそんな瞬間ってどういうことだっけな?って思いながら頁をめくった。
ホンのなかに広がる、それぞれの小さな宇宙。
ひとのことを好きな人の観察力と文章って引き込まれる。


コンテンツを読んだだけで嬉しくなってきたので、いくつかすきなのをのせる。


・The “Fancy Case”[ ファンシー・ケース ]
・Like a Painter Without Studio, Like a Monk Without a Temple [ 画室を持たない画家のように、寺を持たない僧のように ]
・Paint Everything  ひといろに染めること 
・Mamachari [ ママチャリ ]
・No bath? Then make one  風呂がなければ作ること 
・Never put on “finishing touches” 決して完成させないこと
・Or don’t live anywhere at all そしてどこにも住まないこと


ときは2020年、賃貸宇宙の旅

目の前をまたさっきのスケボー少年が横切り、5時をしらせるチャイムが鳴った。





photos by MAKI



May.1.2020

#2 猫語の教科書 / ポール・ギャリコ

recommended by MAKI


「交通事故で母を亡くし、生後6週間にして広い世の中に放り出される。
1週間ほどの野外生活を経て、人間の家の乗っ取りを決意。いかにして居心地のいい家に
入りこむか、飼い主を思いのままにしつけるか、その豊かな経験を活かして本書を執筆。
四匹の子猫たちを理想てきな家庭へ巣立たせた後は、いっそう快適な生活を送り続けている。」

これは、ホンを開いた頁にあった著者ツィツァの紹介文。
そう、このホンを書いたのは猫なのである。
猫が肉球でタイプライターを打ち、じぶんの半生を振り返っている、というはなし。

猫を題材にした小説やエッセイは数あれど、猫目線のホンを読んだのは初めてだった。
ツィツァはニンゲンの家を乗っとり、男性主人を操縦し、ドライブのお供をする。

何食わぬ顔で鳴き声を使い分けたり、表情を作っていると思ったら笑ける。

ニンゲンは猫を飼っているというが、じつは猫に飼われているらしい。

二十歳くらいのころ、アパートメントで4人暮らしをしていたことがあり、
その中のひとりが猫を飼っていた。名はメロン。なんでメロンやねん、と来客に
ツッコまれていた。
そのころ犬派だったわたしは、あ、メロン居るわ〜くらいのテンションだったけれど、
あの時代がいまだったらシャーシャー引っ掻かれるくらい、撫で回していることだろう。

猫と暮らしたいと想い続けて数年、、、
あーうちにも乗っ取り猫が来てほしい。。

photos by MAKI


#1 Mas Amable/DJ Python

recommended by MAKI


朝、雨の音で目を覚まし、窓を開ける。
車のタイヤが雨に濡れたアスファルトを擦る音。
弾く水たまり。

水を入れた緑色のやかんを火にかけている音。
最後のひと袋になってしまった台北で買ってきた
凍頂烏龍茶の葉をマグカップに入れる。
そういえばお茶を買いに行ったあの日もどしゃどしゃの雨だったな。
おじさんが台湾の梅雨のことを「バイウー」って言っていた。

髪の毛をブラシで梳かす、ブラシが頭皮を刺激する音。
ブラシに絡まった毛、髪の色の変化。

机の上に二通の封筒。
切手を買いに、ドアを開け外へ出た。
エレベーターで一階へ。マンションのドアを開ければ、
エレベーターで六階ぶんの、大きくなった雨の音。

このところの人と会わない生活で、以前気にしてなかった生活の音が気になりだした。
ただの感覚。
感情はそこにはない。

そんな時に出会ったDJ Pythonの音楽。
リズムのなかに、いつかの生活で聴いたことがあるような音が紛れ込み、
行ったことのない想像の中の場所が浮かんできた。

photo by MAKI



面白い本なんか読んだ?
会うと必ず私が尋ねる友だち、MAKI
本や雑誌、映画に音楽。美味しいごはん屋さんも。
彼女のフィルターを通したアーカイブは、ハズレなし。
同じ山を違う道から登る彼女、
そっちの具合はどうですかー?
ホレ、と届いた景色はいつもヤラレタ!なのです。

今回よろしく、と頼んだレビューのレスポンス
ね、やっぱり面白いでしょう。
読むも聴くもfeelに過ぎない、ということなのでした。
送ってくれたこのレビューには雨の音が添付されていました。
粋なことする人でもあるんです。